日経新聞2012年12月31日付 5面
ついに2012年も、きょう1日を残すだけとなった。さて今年はどんな年だったのだろうか。自分の生きている時代を同時進行でとらえるのは、なかなかむずかしい。それは後世の史家の仕事かもしれない。だが、それでも、歩む方向をまちがえないようにするためには、過去も振りかえりながら、ちょっと考えてみる必要がある。
そんなことを思いながら、本屋をのぞいていたら、20年ぐらい前に読んだ本が文庫本になって平積みされていたので、なつかしくなり手にとった。
経済学者で東大名誉教授の中村隆英著「昭和史」(東洋経済出版社)である。ぱらぱらめくっていたら、はっとするくだりに出くわした(上 225ページ)。
「日本の社会が平面の上に乗っていて、そのなかで、左翼から右翼まで座標軸上に位置づけられているとしたとき、その平面自体が右方に地滑りを起したとしよう」
「ある個人のこの平面の原点からの距離は不変であっても、平面が右方に動いたために右寄りの考え方になじんでしまう結果になる」
「1931(昭和6)年秋からの一、二年の間に、日本社会はなだれを打って右側に移動したのである」
1931年秋とは、9月18日に起きた柳条湖事件のことだ。満州事変のはじまりである。
2012年9月11日の尖閣諸島の国有化をきっかけに、中国とのあつれきが続く今の時代の空気は、どこか万週事変で平面が右側に傾いた31年の頃に似ているのではないだろうか。
尖閣諸島はもちろん日本固有の領土であり、その後、領海に浸入され、領空を侵犯されているのはわが方である。
ただ、国家主義とも民族主義とも訳されるナショナリズムが刺激されたのは間違いない。その度合で、より傾いているのを右、それでないのを左とすれば、日本社会の平面はやはり右に地すべりをおこしているような気がする。
こんどの総選挙をふりかえってみると、よくわかる。日本維新の会の石原慎太郎代表が吹かせた右からの強風は、保守政党である自民党を左に押しやり、まるで中間的な政党であるかのような印象さえ与えた。
安倍晋三総裁が憲法改正や国防軍という言葉を発しても、憲法廃止や核兵器シミュレーションといった相手を刺激する石原話法によって、中和されたところがあった。政治とは相対的なものであ。
自民党大勝の一つの要因として、こうした「慎太郎効果」をあげてもいいだろう。
尖閣諸島国有化に火をつけて、中国の激しい行動を呼び起こし、それが日本国内での嫌中感情につながりナショナリズムの気分を高めているからだ。
総選挙結果をみていると、民主党圧勝の前回と自民党大勝の今回のように、二大政党で大きく入れかわる相似形の時代が戦前あったことに気づいた。
1931年の柳条湖事件をはさんだ30年2月と32年2月の総選挙がそれだ。
30年、浜口雄幸首相ひきいる民政党が緊縮財政をかかげてたたかい、浜口人気と政友会の不人気もあって273議席を確保し、政友会を100議席近く引き離して大勝した。
32年、すでに政権が民政党から政友会に移っており、犬養毅首相のもと、政友会は景気一本やりで選挙にのぞみ301議席を獲得して圧勝。民政党は議席を半減させる敗北を喫した。
つい最近、『政友会と民政党』(中公新書)を刊行した日本政治外交史の井上寿一学習院大学教授に、この相似形の背景を聞いた。井上氏は31~32年と現在との間には、3つの共通点があるという。
「第1は景気と雇用への判断だ。有権者は、32年が『犬養景気』、今回がデフレ脱却とインフレ目標を設定する『安倍リフレ』にかけた。満州事変も尖閣も対外的に有権者は余り反応していない」
「第2は政党が党利党略で動き、有権者に二大政党制への懐疑の念が強まっていること。第3は格差社会の問題だ。今や一億総中流がくずれ、戦前と同じように格差が拡大している」
政友会は次の36年2月の総選挙で惨敗した。五・一五事件で犬養内閣がおわったあと非政党の挙国一致内閣がつづくが、政友会は単独内閣をめざし天皇機関説で政府をゆさぶり、民政党との政民連携にも距離をおき、有権者に見放された。
そして二・二六事件をへて、二大政党の解党、敗戦への道を突き進んでいく。
国の危機や大きな課題には、政党が協力して向き合い、解決していくのを有権者は求めている。党利党略に走り、その期待を裏切ったとき、何がおこるかは、今も昔も変らない。
第二次安倍内閣は党内の総力を結集する形で発足した。安倍首相はナショナリストのようでいて、実は現実的な判断をするリアリストだ、というのが首相をよく知る人の見立てだ。
保守派を押さえられるのも、また保守党である、という政治の経験知もある。
2012年に平面が右に移動したとして、その中で国を立て直していくのが13年の最大の課題だ。1931年から聞えてくるかね野音にも思いを馳せながら、今夜の除夜の鐘を聞こう。 論説委員長 芹川洋一
いやあ朝日を読んでいるような錯覚に陥る迷文だ安保闘争の時代に赤く染まり左翼思想の元で年を重ねた人間の悲願だった自民政権打倒がわずか3年でみじめに瓦解したくやしさやるせなさといったどうしようもないあせりがよく感じられる
自民憎しのあまりこれだけの紙面を使った記事で素人が読んで分かる理論矛盾を犯していることすら気づいていないのか確信犯的に誘導しようと努力をしているのかおそらく後者なのだろうが
導入部の文庫本をぱらぱらとめくっていていきなり核心的な一文に出くわすあたりまるで小説を読んでいるような迫力がありつかみは十分であるが『昭和史』の著者が経済学者では説得力も半減である歴史のことは史学者に語らせろそれができないのは20年ぐらい前の経済学者といえばマルクス経済学でありつまり共産主義史観に染まった内容だと告白したくてもできないからだろういまどきマルクス経済学など我が国以外では完全にすたれており経済史の分野に組み込まれてしまっていると聞くそのなによりの証拠がベルリンの壁崩壊に象徴される共産主義の瓦解ではなかったのか
そこに書かれている内容自体にまちがいはないと考える
「日本の社会が平面の上に乗っていて、そのなかで、左翼から右翼まで座標軸上に位置づけられているとしたとき、その平面自体が右方に地滑りを起したとしよう」
「ある個人のこの平面の原点からの距離は不変であっても、平面が右方に動いたために右寄りの考え方になじんでしまう結果になる」
では問うが民主党政権時代にその平面は水平だったと誰がどのようにして証明できるのだろうか個人的にはその平面はあの安保闘争の時代以来ずーっと左に傾いていたと主張するものだが同様にこれを証明できる材量はとぼしい
ただあの時代に団塊の世代と呼ばれた大量の若者が左翼思想に染まり政治形態としては民主主義ながら有権者個人の心中には共産主義に対する根拠のないあこがれや親近感があったのではないかと思う
そういう人間が大量発生し社会の中枢で今や組織の頂点から上部にあって社会を動かそうとしている
残念なことにそうした動きが団塊の世代の上下に伝播しなかったために社会全体を動かす力にまでは至らなかったのではないかそのかわりにマスコミの編集部を支配して記事を書かせ大衆を煽動し政治家となって当選をめざし雌伏すること40年ついに本懐を遂げたのが3年前の民主党政権だったのではないか
鳩山 由紀夫65歳 菅 直人66歳 芹川洋一62歳
みな同世代であり多かれ少なかれ左翼思想にかぶれていることは断言していいだろうそれは過去の発言や行動から明らかだそして世界中の共産主義国が中共と北朝鮮とキューバを残して崩壊し壮大な実験が失敗だったことがあきらかになったあとも自らの信条を曲げることなく滅びた思想にしがみ付いている世代なのだ
もうひとつ傍証を示す
第3は格差社会の問題だ。今や一億総中流がくずれ、戦前と同じように格差が拡大している
当時我が国は資本主義国でありながらもっとも成功した社会主義国だという皮肉たっぷりの讃辞を得ていたものだがそれこそが当時の社会が中立ではなく左傾化していたというひとつの証左とはならないのか保守党政権下だったのは事実だが当時の自民党は(今でも)派閥化しており議員ひとりひとりの思想内容をチェックすれば右は極右左は極左と千差万別だったからそれをひとからげにして「保守政権」と呼ばわるのは余りに浅薄といえよう
事実その政策は産業界に国策が強力に介入することにより自由競争の道はとざされ異種業種への新規参入ははばまれ内国事業は手厚く保護されて海外からの経済侵略を強力に防護して当時の社会を形成してたではないか
何という皮肉かと思うが当時かれらが打倒しようとしていた社会の方が現在よりもよほど共産主義的だった
だがもっと気の毒なことにかれらはそれに気づいていたのか気づかなかったのか実を取らずに主義主張をとって自民党政権打倒を叫び続けマスコミで社会を煽り教育で若い世代を洗脳し心情的なシンパ(同調者)をふやして3年前の政権交代を成功させた
その結果政治も経済も暮しも何もかもが秩序を破壊され社会は混乱におちいった
一億人が踊らされ我に返ったのが今回の総選挙の結果であろう
自民党は自分たちがすでに昔日の支持を失くし有権者の支持組織もずたずたにされた中での拾い物の勝利だということくらい自覚しているその証拠の一つに当選者の顔には笑みがなかった一様に歯を食い縛り硬い表情で当選のインタビューに答えていた
隠そう隠そうとしても鎧の下からうろこが見えるように本音が現われている
2012年に平面が右に移動したとして、その中で国を立て直していくのが13年の最大の課題だ。
本音は「2012年に平面は右に移動した、その中で自民党を失敗させていくのが13年の最大の目標だ。」であろう
この時代はあと10年は続くだろうそうして団塊の世代が現役を退きその後の世代が社会組織の調整と運用を始めるときになってはじめて右傾化も左傾化もしない中立な場が生まれる可能性があるそれも徐々にそうなる
現在の組織は頂点に立つものの色に染め上げられているからそれを独自色に塗り替えるには二世代三世代の時間がかかるだろうそうなってはじめて我が国は共産主義の呪縛から逃れでることができるといえると思う
なにしろ1億人という人数の大半が団塊の世代よりも若くそのまた大部分が多かれ少なかれかれらの影響下で共産主義の抵抗をなくされてしまった状態に洗脳されているのだからこの影響を消し去るのには長い年月が必要になることが確実だ
自分が生きているうちにそういう社会は現出しないだろうけれど自分には理想も欲もないからどうなろうと関係ない